飽海郡八幡町と最上郡真室川町を結ぶ国道344号は青沢越えと呼ばれ、庄内−最上間の幹線、国道47号の側道
としての役を担っている。山間部を縫っているため自然条件は厳しく近年までは冬期の交通は著しく制限されていた。
上青沢大芦沢に旧道の隧道が残されている。既に幹線は新道に代替わりしており、この隧道を通らなくてもすぐ横に
切られた切り通しから新道に出入りできるため存在価値があるわけではなく、その役は終わっているのであるが封鎖
されることなく延命している。
すぐ横から新道に出られる
この隧道を通る利点としては、八幡町方面に出る場合の距離が10mほど短縮できる程度で、
無くても困らないと思われる存在となっている。隧道口には「徐行」「最徐行」と立て看板があり
盛んに注意を喚起しているが、「そんなに心配ならば横の道を通れば済む話なのではないか」
と云われてしまいそうである。
内部の様子
それでも著しく旧態化した昭和最初期のこの隧道を地域で使い続けていることには
何か理由があるのだろう。または逆に、使用に耐える現況から廃する理由が見あたら
ないということもあるかもしれない。いずれにせよ隧道にとっては幸せなことである。
坑門上部
コンクリート造りではあるが、伝統的な石組みを踏襲しようとしたかのような痕跡が見て取れる。
扁額と云うよりは隧道銘標
隧道名の表示は縦型の陶板2枚という珍しいものである。これに類するものは、庄内の油戸−竹の浦を
結ぶ神子沢隧道に見られるのみであり、山形県内では極めて稀少な形態であると言える。
存在意義は少ないが、廃止理由もこれといって見あたらないという中途半端な立場が延命につながるという面白い例である。
蘆澤(あしざわ)隧道 昭和3年 延長22m 幅員3m
(topに戻る) (現役隧道集topに戻る) (次ページ)