龍王橋
国道13号上山バイパスがリナワールド前で分岐すると、旧道は須川を越え上山市街へと向かう。その須川を越えてゆくために
架かっているのが龍王橋である。この橋の名を知る人は多いが、その姿を見た人は少ない。
路上から見る龍王橋 親 柱
道路上から見る龍王橋はほとんどその存在感を示さない。通行する人は、橋を越えている意識もないまま車を運転している。
親柱も全く地味で味気のないコンクリート製の慎ましいものである。ところが、橋を下から見るとその印象は一変する。
存在感は抜群
まるで古代ローマ遺跡のようである
昭和10年竣工 巨大な橋脚
完成直後の龍王橋:土木学会図書館より使用許可
この画像を見ると、現在の味気ない親柱や高欄は完全に後補のものであることがわかる。画像には
人の背を越えるほどの立派な親柱が写っており銘標もかなりな大きさであったことが伺える。
この橋には妙な話がある。地元の人の中には、「この橋を工事した多くの朝鮮の労働者(事故死者)が橋付近に埋葬された。」
という人があるのである。真偽のほどは確かめようもないが、現在墓らしきものは見あたらない。現行憲法が制定される以前のこと、
人権などという言葉もなかった時代の話である。話は本当だったとしても墓標さえないのかも知れない。
橋の北側には龍王温泉が湧出している。有料で入浴もできるが、温泉というより鉱泉に近い湯であった。
昭和10年という古い年代の橋であるが、壮大な建造物となったため、古くから絵葉書や記録写真に
多くの画像が遺されていた。橋本体は現在も変わらないものの、装飾物の類は大幅に簡略化されて
いるのがわかる。通行する自動車が増加するに伴い、その視界を妨げないための措置として改修を
受けたものと思われるが、せっかくの壮大な橋が路上からは貧相な様子しか窺えなくなってしまった
ことが大いに残念である。龍王橋の偉容を見るためには川縁まで降りていく必要があるが、現在
その道は土砂捨て場になってしまい、通行が困難になった。無理に下るのも危険な状態であり、
簡単には見上げることができなくなってしまったのもまた、不幸なことである。北側の側道から遠巻きに
観察することは出来るものの、直下から見上げたときの迫力には到底及ばぬ眺めに過ぎない。
建設中
初期の高欄 親柱があった頃
絵葉書に載る名所
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